産業保健師をしていたり、転職活動中の志望動機を考えているとよく出会う言葉「健康経営」と「産業保健」。漢字からなんとなく意味は分かる気でいるけど、もし面接で深堀りされたら説明できますか…?
この記事では、両者の違いを初心者にもわかりやすく解説し、なぜそれぞれが重要なのかについて掘り下げていきます。
健康経営と産業保健の違い
健康経営(Health Management)と産業保健(Occupational Health)は、企業や組織における健康管理の重要な側面を担っています。一見すると、似たような言葉ですが、それぞれ異なる視点と目的を持っています。
1. 健康経営(Health Management)
健康経営は、企業全体の健康を総合的に管理することを目的としています。具体的には、従業員の健康促進や疾病予防、労働環境の改善などを含みます。健康経営の視点では、従業員が健康であることが企業の持続可能な成長や生産性に直結すると考えられています。
主な健康経営の特徴:
- 総合的アプローチ: 従業員の身体的、精神的健康を包括的に管理。
- 予防と健康促進: 疾病の予防や早期発見を促進するプログラムの実施。
- 労働環境の改善: 健康を支援する職場環境の整備や安全対策の推進。
- 社員満足度と生産性の向上: 健康な職場環境が働き手の満足度やパフォーマンス向上に寄与するとされる。
企業が健康経営を推進することで、長期的な視点での従業員の健康状態改善を図り、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
2014年度に健康経営度調査が開始されて以降、コラボヘルス、働き方改革関連法の施行といった企業従業員への健康維持・増進に関連する施策が増加していきました。健康経営優良法人認定制度は、今や就活生や転職組が企業選びの時に参考にする1つの指標になっています。
2. 産業保健(Occupational Health)
産業保健は、労働者の健康と労働環境の安全を専門的に管理する分野のことを指します。特に、職場における労働者の健康リスクや労働災害を予防し、最小化することを目的としています。産業保健の視点では、職場における特定の健康問題やリスクファクターに焦点を当てて対策を講じます。
主な産業保健の特徴:
- 労働安全と健康管理: 職場における安全基準や健康リスクの評価・管理。
- 法的規制とコンプライアンス: 労働法や産業衛生基準に基づいた対応。
- 職業病の予防: 特定の業種や作業に伴う健康リスクの予防策の実施。
- 労働者の健康保護: 労働による身体的、精神的負荷に対する保護措置の推進。
産業保健は、労働者が安全で健康的な環境で働けるようにすることで、職場全体の安全性と効率性を確保します。特に危険な業種や特殊な作業環境では、産業保健の専門知識と実務が不可欠です。
産業保健師や企業看護師が行う「実務」=「産業保健」というわけです!
健康経営と産業保健の重要性と統合
健康経営と産業保健は異なるアプローチを持ちながらも、互いに補完しあう関係にあります。
健康経営:企業全体の健康促進と生産性向上を図る
産業保健:具体的な職場の健康リスクを管理し、法的規制を遵守する役割を果たす
企業が成功するためには、両者を統合的に捉え、戦略的に取り組むことが重要になります。例えば、健康経営の枠組みの中で産業保健の専門知識を活用し、職場環境を改善する取り組みが効果的です。逆に、産業保健の実践が健康経営の一部として位置づけられることで、より安全で健康的な職場環境の構築が可能になります。
「健康経営」は会社役員などの上層部が方向性を決めて、実務に落とし込んでいくため、産業保健師はどの部署にも属さない場合や、役員や経営層直属のポジションである場合があります。
まとめ
健康経営と産業保健は、それぞれ企業の健康管理における重要な要素であり、異なる側面から職場の健康と安全を支えています。企業がこれらを統合的に運用することで、従業員の健康状態の向上、生産性の増大、そして組織全体の持続可能な成長を促進することができます。健康経営と産業保健をしっかりと理解し、組織にとって最適な戦略を策定することが重要です。
そして、面接準備で必ず知っておきたいのが、自分の受ける会社の健康経営や産業保健への取り組み状況。必ず、会社HPやIR情報(Investor Relationsインベスター・リレーションズ:企業が自ら株主や投資家に向けて発信する情報)をくまなくチェック。その会社の強みや弱みも読み解くことができ、自身のアピールポイントを探す手がかりにもなります!
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